夜空の下で
ほおけた頭を働かせようとしたがキスが激しくなって口の中に舌が入ってきた。
私、誰とキスしてるの?
ただ目を開けず、相手の熱だけを感じた。
夢じゃない。
わかっているけど目を開けることができない。
夢が、覚めてしまうのが怖い。
首に伝う自分のか相手のかわからない唾液に、一気に冷静になる。
「ゃぁ…だ」
キスの合間からこぼれる自分の声。
でも言ったとたん、もっとキスが深くなった。
激しさに涙がこぼれそうになり、ゆっくりと目を開けた。
見えるのは、月夜の顔。
女子にモテる整ったその顔が近くにあり、
彼の唇と私の唇が重なっていた。
「つ…きや」
私の声に気づいたのか彼の顔が離れる。
名残惜しそうに私達の舌が糸をひく。
彼の夜のような真っ黒な瞳が私を捕えた。
「陽菜のキス、奪っちゃった」
そう言って可愛いらしく舌を出す月夜。
でも私の知ってる月夜じゃない。