†正しい王様の在り方†~Fake!!(フェイク)外伝~
シュゥゥゥン

執務室の空間が揺らぎ、レオルドは毛足の長い柔らかな絨毯の上に、軽やかに飛び降りた。

「あっ、レオルド様、お帰りなさい!思いの外早いお戻りでしたね。」

写し身に午後のお茶を用意していたラビィが彼を振り返り、嬉しそうに駆け寄る。


「いや、ちょっと調べ物をしに戻ったんだ。ラビィ、手伝ってくれ。」

「はぃ!」

「確か数日前に、苦情が届いていたな?処理を後回しにしてしまっていたんだが、内容を覚えているか?」

「覚えているかって…レオルド様!やっぱりいい加減に執務をされていたんですね。」

「う…。」


ラビィの指摘にレオルドはたじろぎ、近くにあった書類の山を崩した。
大量の書類が宙を舞い、されがバサバサと彼の頭に降り注いだ。


「あーっ、レオルド様!今日整理したばかりの書類が…あ…でも、これです。ありましたよ。」

ラビィが拾い上げた書類を受け取り、レオルドはそれに素早く目を通した。


「ふぅん…。成る程ね。これはアイツらには結構厄介かもしれないな…。」

眉根を寄せ、彼は呟くと書類を上着のポケットにねじこんだ。

「レオルド様、何を企んでいるんです?僕は城下に視察に行かれてはどうですか?とは言いましたけど、他人を巻き込みなさいとは言ってませんよ。」

「ラビィ…あのなぁ。」

腰に手を当て、彼を見上げ厳しい視線を浴びせるラビィを見下ろし、レオルドは苦笑すると首を左右に振った。


「さぁて、それじゃあ俺は戻る。安心しろ、この仕事は俺が責任を持って遂行する。」


パチン

レオルドは指を鳴らした。
瞬く間に彼の姿は歪んだ空間に溶け込むように消えた。


「レオルド様…だから僕は心配になってしまうんです。だって貴方は、国政の責任をすべてご自分で背負い込もうとされる…貴方はあまりにも真っ直ぐ過ぎるんですよ…。」

残されたラビィはそう呟き、散らばった書類を黙々と拾い集めた。
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