†正しい王様の在り方†~Fake!!(フェイク)外伝~
【キマイラの森】
ザクッ…ザクッ
足元の氷柱を踏みしめながら、レオルド達三名はキマイラが潜んでいるという噂のベリエル杉の森を歩いていた。
周りを見渡すと、太い杉の他は月明かりを反射し、ブルーの輝きを放つ水晶のような氷に閉ざされた美しい世界が広がっている。
「うわぁ、すごい。こんな景色、今まで見たことがない。」
「そうですね。この魔道と騎士道の国にはぴったりな…幻想的は雰囲気がありますね。」
フェイとアベルは、特に目を引く大きな氷柱を見上げながら溜息をついた。
その溜息も、すぐに凍てつき、キラキラと輝く粒子となり彼らの周りに光のベールを作った。
「二人とも、ここの美しさに惑わされるなよ。すでに化け物の妖気が満ちているぞ。」
「妖気?」
レオルドの言葉にフェイが反応する。
「ああ、多分キマイラのだと思うがな…。」
「“だと思う”って…エンリケ、微妙に語尾を濁すな!他にも何かいるって言うのか?」
「いるよ。ここはベリエルでもちょっとした心霊スポットだからな。コイツらがウヨウヨ…。」
レオルドは、そう言いながら手をユラユラを揺らしながら、フェイに向かって幽霊の真似をして見せた。
(うぇっ!マジ?)
フェイの身体から、サァァッと音を立てて血の気が引いた。
無意識のうちに、呼吸が上がり体が硬直し、肩に力が入る。
「あれっ?もしかしてフェイ…アンタこれが怖いのか?」
「ちちちっ、違う!そんなんじゃなぁぁい!」
「へぇ…意外だなぁ♪」
フェイの素直な反応にレオルドは面白そうにクツクツと笑った。
「馬鹿エンリケ!笑うなぁぁっ!」
フェイが真っ赤になって地団太を踏む。
その度に氷柱が澄んだ音をたてて砕け散った。