†正しい王様の在り方†~Fake!!(フェイク)外伝~
「執務室にこもって鬱々とされている位なら、いっそのこと城下に視察にでも行かれたらどうです?」

「視察ぅ?」

「はい!視察はレオルド様の十八番じゃないですか。身分を隠して城下をブラブラ…。」


髪をとく手を休める事無く、ラビィは鏡に映る俺の目を覗き込みニコニコと微笑んだ。


(ラビィの奴、俺をうまい話で釣り上げようと必死だな…まぁ、視察も久しぶりだ。今回はコイツの話に乗ってやるか。)


「気分転換には丁度いいかもしれないな。よしっ、そうと決まれば…。」

俺はラビィに向かってニヤリと笑い、パチンと指を鳴らした。
変装用黒髪のカツラとこざっぱりとした衣装が現れた。


「あ、それではお召し替えを…。」

「いや、後は自分でやるからお前はもう下がっていい。執務室にはいつもの写し身を置いていく。」

「…わかりました。それじゃあ、気をつけて行ってらっしゃいませ!」

ラビィはペコリと礼をすると弾んだ足取りで寝室を出て行った。


(そこまで露骨に喜ばなくてもいいだろうに…。とにかく、街に出れば何か面白い事があるかもしれないな。)

萎えていた心がウキウキと弾みだした。
俺はそそくさと身支度を終えると、執務室に写し身を放り込み、指を鳴らした。

「移動先は、ウリエル通り中央広場…redirect!」

呪文を詠唱すると、寝室の壁がグニャリと歪み、極彩色の光が俺を包んだ。
< 7 / 37 >

この作品をシェア

pagetop