輪廻の世界


ここに居ても仕方が無い。見つかるのは不思議だけだ。そう思った僕は鞄を持って教室の扉から、顔を廊下へと出した。左右を確認するように見ると、そこにあるのはただ直線に延びる廊下。そう、ただ只管真っ直ぐ、止まることなく永遠と。


完全に教室から出て、廊下の窓を開ける。奇妙なまでにそこに風は無くて、空気は少し冷たかった。冷たい、匂いがするんだ。僕が振り返るとさっきまであった教室は跡形も無く、最初からそこになかったように消えていた。僕が手をかけた扉も何もかも、そこにはもう無い。どういうことなんだ、これって。夢じゃない。だってこの冷たい空気の匂いも刺すような夕陽の眩しさも知っているし、感じている。ここは現実。余りにリアルすぎて、それを受け入れられないだけなんだ。


鞄の中に入れているサバイバルナイフに手をかけた。冷たい温度が指先から僕の頭へ、そして溜息になって出てくる。何でこんなことになっているんだろう。そこにナイフがあるということは何かを斬らなくちゃいけないんだ。それが人なのか、物なのか、ただそれだけが不明。ナイフを持ったところで今は使わない。そう判断した僕は手を放して、鞄をしっかりと肩にかけなおした。


とにかく、どうすればいいんだろう。出口なんてない。ここは4階だし、窓から飛び降りるなんて無理だ。飛び降りたところで、僕が校舎から出るだけだ。この静寂がなくなるわけじゃない。なくなって欲しいわけでもない。
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