皎皎天中月
 芳空はただ、うさぎを見上げていた。そして、小刀を仕舞う。
「薬を知っているのか」
 また大きな声で問う。
「知っているさ」
 答える声は大きくない。が、どこか嬉しそうにも聞こえる。

「案内してくれないか」
 芳空は続ける。
 うさぎに案内を乞うなど、正気か。
 
 うさぎは明らかに明千を見た。
「お前も刀を収めるならな」
 うさぎの言葉を受け、明千、と窘めるように芳空が名を呼んだ。渋々小刀を鞘に収め、帯の裏に仕舞い込む。
 うさぎが満足気に頷いたように見えた。

「あとは、お前達が姐さんを説得できるかどうかだ」
< 110 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop