皎皎天中月
 茹で上がった芋も食べたが、焼いた方が旨かった。芳空と目を丸くしていた。軍では、芋は茹でて食うものと決まっていた。手軽で旨いなら、焼く方が断然良い。
 うさぎは先から、芋を外した茎をせっせと食べている。

「俺たちは」
 うさぎを横目で見ていると、芳空が言った。
「本当に生きているのか? あの崖から落ちて、そのままどうにかなっちまったんじゃないのか?」
 声が震えている。明千もそれを考えないでもない。だが、腹が減っていて、芋を掘って、焼いて、それを美味いと思って食べ、腹が満ちた。生きている証と言わずに何と言おう。
「どうもなっていない」
 言い切った。が、芳空は顔を上げない。気弱な姿を見せている。
 明千はその姿をじっと見つめ、それから立ち上がって芳空の胸ぐらを掴んだ。芳空は戸惑って顔を上げた。明千は躊躇わずにその頬を殴った。
「痛え」
「痛いだろう。俺が殴ったから」
 淡々と言う明千の言葉に、芳空は赤みを帯びた頬をさらに赤らめた。明千の胸ぐらを掴み返す。
「ふざけんなよ、明千」
「ふざけてなどいない。何故痛むかよく考えろ」
 芳空は気勢を削がれて、明千を掴んでいた手の力を抜いた。その隙に、明千の片手は芳空の上腕の袖を掴む。そのまま腕を抱え込むように引くと、芳空の体が浮いて明千に背負われる形になり、そして地面に転げ落ちた。
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