皎皎天中月
「だから、痛えよ」
「受け身はできていた」
地面に転げている芳空に手を伸ばした。握られて、力を入れて引き上げてやる。
「芳空、分かったか。なぜ、痛いのか。なぜ、投げられて咄嗟に受け身を取れるのか」
立ち上がった芳空は、服に付いた土を払い落とした。顔を上げた。
「分かったよ」
うさぎは食べるのを止めて、二人のやり取りをじっと見ている。
「生きているから、痛え。生きているから、体に染み付いた動きが出来る」
明千は頷いた。
「岩壁を登ってでも進むと言ったのはお前だ。俺はそれに着いてきただけだ。気弱になるな」
へっ、と芳空は笑った。芋が入って重くなった自分の背嚢を背負い、それから明千にも渡した。明千も荷を背負った。
うさぎが二人の足元まで来た。二人を見上げて言う。
「この山は、おかしな山だ」
「言われるまでもない」
「俺はここに住んでいるから何ともないし、お前達に会うのは面白い。だけど山は生き物が来るのをあまり歓迎しない。まずは崖で拒んでみせる」
うさぎは、二人の顔を交互に見た。赤い眼をきょろきょろと動かす。
「この先もまた、拒まれるかも知れんが、そうしたら今見たように、互いに励まし合え。意気地を見せろ、そのうち山が受け入れてくれる」
「受け身はできていた」
地面に転げている芳空に手を伸ばした。握られて、力を入れて引き上げてやる。
「芳空、分かったか。なぜ、痛いのか。なぜ、投げられて咄嗟に受け身を取れるのか」
立ち上がった芳空は、服に付いた土を払い落とした。顔を上げた。
「分かったよ」
うさぎは食べるのを止めて、二人のやり取りをじっと見ている。
「生きているから、痛え。生きているから、体に染み付いた動きが出来る」
明千は頷いた。
「岩壁を登ってでも進むと言ったのはお前だ。俺はそれに着いてきただけだ。気弱になるな」
へっ、と芳空は笑った。芋が入って重くなった自分の背嚢を背負い、それから明千にも渡した。明千も荷を背負った。
うさぎが二人の足元まで来た。二人を見上げて言う。
「この山は、おかしな山だ」
「言われるまでもない」
「俺はここに住んでいるから何ともないし、お前達に会うのは面白い。だけど山は生き物が来るのをあまり歓迎しない。まずは崖で拒んでみせる」
うさぎは、二人の顔を交互に見た。赤い眼をきょろきょろと動かす。
「この先もまた、拒まれるかも知れんが、そうしたら今見たように、互いに励まし合え。意気地を見せろ、そのうち山が受け入れてくれる」