皎皎天中月
堂々たる体躯で、自信たっぷりにそう言い切った。が、恵孝は意味がさっぱり分からない。
「餅を撞く……?」
「そう。俺は満月になるまで餅を作り、満月が出来たら今度は、姐さんが朔になるまで餅を食べる。朔と満月で交代なんだ。その間、池の近くを離れられない。それが俺達の仕事だ」
何やら解説されたものの、やはり恵孝には理解できない。一つ一つの言葉の意味はわかるが、それを繋げた意味が不明だ。
「どういうことだ」
恵孝がさらに尋ねると、「ああ」と、うさぎ男は焦れったそうに声を上げた。
「お前、絶対に頂上まで登って来いよ。そうしたら、俺の仕事を見てくれ。そうすれば分かるから」
うさぎ男は恵孝の両肩に手を置いた。恵孝は気圧されて、頷く。
「もう、行かないと。お前がかなり上まで来ていることは、姐さんも勘づいているはずだ。お前、」
ふと言葉を切った。うさぎ男は目を丸くして、恵孝に尋ねる。
「お前、名前は? あいつらが何と呼んでいたっけな。杏、恵」
「恵孝だ。杏恵孝。君は?」
恵孝も尋ねる。うさぎ男は嬉しそうに答えた。
「俺は、玉兎と呼ばれている」
「玉兎……美しいうさぎ、か。正に、君に相応しい名だね」
玉兎はまた体を捻った。名の通り、光を放つかのように真っ白な毛皮と、宝玉のような赤い双眼、そして長い耳を持つ美しいうさぎがそこにいる。
「恵孝、きっと登って来いよ。俺はまたお前に会いたいよ。お前は優しい奴だ。俺は、恵孝の望みが叶って欲しいと思っている。姐さんに気に入ってもらえると良いな」
恵孝は頷いた。ここ何日かで感じなかったほど、頭も心もしゃんとしている。ろくな物を食べていないので体は重いが、今日はしっかり歩けそうな気がした。
「玉兎の仕事ぶりを見に行くよ。助けてくれてありがとう」
「餅を撞く……?」
「そう。俺は満月になるまで餅を作り、満月が出来たら今度は、姐さんが朔になるまで餅を食べる。朔と満月で交代なんだ。その間、池の近くを離れられない。それが俺達の仕事だ」
何やら解説されたものの、やはり恵孝には理解できない。一つ一つの言葉の意味はわかるが、それを繋げた意味が不明だ。
「どういうことだ」
恵孝がさらに尋ねると、「ああ」と、うさぎ男は焦れったそうに声を上げた。
「お前、絶対に頂上まで登って来いよ。そうしたら、俺の仕事を見てくれ。そうすれば分かるから」
うさぎ男は恵孝の両肩に手を置いた。恵孝は気圧されて、頷く。
「もう、行かないと。お前がかなり上まで来ていることは、姐さんも勘づいているはずだ。お前、」
ふと言葉を切った。うさぎ男は目を丸くして、恵孝に尋ねる。
「お前、名前は? あいつらが何と呼んでいたっけな。杏、恵」
「恵孝だ。杏恵孝。君は?」
恵孝も尋ねる。うさぎ男は嬉しそうに答えた。
「俺は、玉兎と呼ばれている」
「玉兎……美しいうさぎ、か。正に、君に相応しい名だね」
玉兎はまた体を捻った。名の通り、光を放つかのように真っ白な毛皮と、宝玉のような赤い双眼、そして長い耳を持つ美しいうさぎがそこにいる。
「恵孝、きっと登って来いよ。俺はまたお前に会いたいよ。お前は優しい奴だ。俺は、恵孝の望みが叶って欲しいと思っている。姐さんに気に入ってもらえると良いな」
恵孝は頷いた。ここ何日かで感じなかったほど、頭も心もしゃんとしている。ろくな物を食べていないので体は重いが、今日はしっかり歩けそうな気がした。
「玉兎の仕事ぶりを見に行くよ。助けてくれてありがとう」