皎皎天中月
 見つけられなかったら。
 痛みが引けば、いや、少しでも和らげば。帰る。転がってでも、這ってでも。
 引かなかったら、気を失い、そのまま気が付かないかもしれない。既に意識は混濁しつつあった。気を失ったほうが痛みを感じないから、体がそうさせようとしている。
 霧のせいか、痛みのせいか、目の前にあるものが霧なのか、見えているものは夢か現か、曖昧になっている。
 体全部が痛い。
 瞼が重い。

 霧はなお一層、濃い。
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