皎皎天中月
「良いか」
兵士は槍を構えたまま、静かに声を発した。怒りが込められている、と恵孝は思った。
「待って」
兵士が言葉を続けるために息を吸うのと、恵孝が発言するのが同時だった。
「これからあなたが言おうとすることを聞くから、父から槍を下ろしてくれないか」
恵孝は真っ直ぐに兵士を見る。
「あなたの刃は、危険だ」
安全な刃などあるか、と恵弾の目が言う。余計な口出しをするな。
兵士はしばらく恵孝を品定するように眺めた。そして、すっと恵弾から槍を下げ、そのままそれを、恵孝の左胸に当てた。
「ありがとう」
恵孝の謝辞に恵弾は目を見開き、反論しようとしたが兵士の言葉に遮られる。
「良いか。このように、お前の命は俺の槍に掛っている」
「槍を操る、あなたの意思に」
「その通り。従わない、という行動が俺の意思を操作した時、お前の心臓はいとも簡単にこの槍の餌食となる」
恵孝の首筋を、汗が静かに伝う。
兵士は槍を構えたまま、静かに声を発した。怒りが込められている、と恵孝は思った。
「待って」
兵士が言葉を続けるために息を吸うのと、恵孝が発言するのが同時だった。
「これからあなたが言おうとすることを聞くから、父から槍を下ろしてくれないか」
恵孝は真っ直ぐに兵士を見る。
「あなたの刃は、危険だ」
安全な刃などあるか、と恵弾の目が言う。余計な口出しをするな。
兵士はしばらく恵孝を品定するように眺めた。そして、すっと恵弾から槍を下げ、そのままそれを、恵孝の左胸に当てた。
「ありがとう」
恵孝の謝辞に恵弾は目を見開き、反論しようとしたが兵士の言葉に遮られる。
「良いか。このように、お前の命は俺の槍に掛っている」
「槍を操る、あなたの意思に」
「その通り。従わない、という行動が俺の意思を操作した時、お前の心臓はいとも簡単にこの槍の餌食となる」
恵孝の首筋を、汗が静かに伝う。