皎皎天中月
 章王は、すぐに姫の後を兵士達に追わせた。雨はますます激しくなっていた。

「陛下!」
 兵士が一人、ずぶ濡れになって王宮に駆け戻って来た。
「恭はどうした」
 章王は兵士に歩み寄る。兵士は章王に一礼し、まだ息を切らしながらもはっきりと告げた。

「見つけられません」

 章王は目を三角に吊り上げた。
「見つけられないとはどういうことだ」
「この雨では到底無理です。呼ぶ声は雨音に消されてしまいます。闇で姿は見えません。こちらの灯火も姫様から見えないでしょう。道はぬかるんでいます。危険です、そのため……」
「馬鹿者!」
 章王の怒号が飛んだ。王妃は顔を真っ青にして倒れ込んだ。

「それでも兵士か! 娘の身に万が一のことがあったらどうする」
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