皎皎天中月

月天子

 章王は口元を歪め、己の両手と娘の顔を交互に見た。

「ひ、姫は」

 口を開いたのは、侍女だった。
「天界人に、会おうと、したのです」

 体の震えを必死に堪えながら、言葉を一つずつ繋いでいく。

「『満月の夜、月光を浴びること三刻。さすれば月天子、汝を見つけ、迎えに来る』……」
「それは」
 歌のような、耳に残る音の高低があった。
「先月、城を訪れた旅人が、姫に教えたのです。自国の、わらべ歌とか」

 この国には、しばしば旅人が訪れる。その中には、是非国王に会いたいという者もいる。章王は旅人をもてなす宴を度々開いていた。

「姫様が、その歌の文句を鵜呑みにしたと?」
 恵孝の言葉に、侍女は頷く。
「昨晩が、旅人が来てから初めての満月だったものですから。姫はずっと楽しみにしていて、それで……」
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