皎皎天中月
奥まで見えるほどの明るさになり、恵孝は目を見張った。地上階にも増して狭い、人が一人通れるだけの通路。そして、天井までの書棚に隙間なく並べられた書物。
「この中から『深仙山記』という、古くて薄っぺらい書をお探し」
恵孝は布に隠れた口をぽかんと開いた。その顔を見て、丹祢は喉を鳴らして笑った。
「冗談だよ。こっちだ、お前でなければ届かないよ」
丹祢を追い、指示された書物をそっと抜き取った。それでも埃が降って来た。
「これですか」
「私は字が読めないんだよ、恵孝」
丹祢が呆れて答える。
「『深仙山記』って書いてあるのかい」
恵孝は明かりの傍へ行き、表紙を見た。が、表紙の字はかすれて読めない。表紙を捲ると内表紙があり、そこには確かに『深仙山記』と書かれていた。
「この中から『深仙山記』という、古くて薄っぺらい書をお探し」
恵孝は布に隠れた口をぽかんと開いた。その顔を見て、丹祢は喉を鳴らして笑った。
「冗談だよ。こっちだ、お前でなければ届かないよ」
丹祢を追い、指示された書物をそっと抜き取った。それでも埃が降って来た。
「これですか」
「私は字が読めないんだよ、恵孝」
丹祢が呆れて答える。
「『深仙山記』って書いてあるのかい」
恵孝は明かりの傍へ行き、表紙を見た。が、表紙の字はかすれて読めない。表紙を捲ると内表紙があり、そこには確かに『深仙山記』と書かれていた。