皎皎天中月
「国の金庫は寂しくなり、さすれば、税が増えるは必定」
 更に。
「姫様がみまかられた後は、その霊を慰めるための堂が建てられましょう。同時に、姫様のいのちを救えなかった我々は首を撥ねられる――医術は老いた者か若造に委ねられ、この国は」
「もうよい、恵弾」
 暁晏は額に手を当てて、恵弾の言葉を遮った。そう、姫の命が尽きれば、自分達の命も。
「恵弾。お前は頭が切れる、が」
「口もなお正直。自分でも解っていますよ。自制もします。今は暁晏さんが話せと言った」
 苦笑が混じる。

「恵正先生は豪快、お前は冷徹」
「誉められている、と思いましょう」
「息子はどうだ」
 伝えない、という選択ができなかった息子。恵弾は眉をひそめた。

「……不肖の息子です。知識はそれなりに身につけましたが、まだまだ……昨日も」
「身の処し方を知らぬ、か。若さ故だ、陛下の仰った通り。口も正直とは、お前とそっくりではないか」
 暁晏は手に残っていた二つ目の饅頭を、ばくりと口にした。
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