皎皎天中月
第十の月 十八日


 明け方、深仙山への捜索隊が組まれた。が、集まった兵の士気は上がらない。
 集められたのは、城や都を守る兵たちである。雨の満月の夜に、辛うじて手傷を負わなかった者たちである。明千もそこにいた。他の者と同じように、顔に不服と書いてある。

 皮の手袋をはめた恵弾は、広間に並ぶその兵ら、二十数名の様子を物陰から見ていた。恵弾と同様、皮の手袋と足袋をはいた医者たちが、庭のあちこちに散らばっている。蛇殺し草を、それこそ根こそぎ採取し、その解毒薬を作ろうというのである。空が白み始める頃は、この草はその毒牙を葉の内側に仕舞っている。
 明千が恵弾の姿を認めた。恵弾はゆっくりと首を垂れたが、明千はついと視線を逸らす。息子より三つほど年嵩であろう青年は、伝説の薬なぞの情報をもたらした医者を恨んでいようか。肩を落とし、恵弾は蛇殺し草の撤去に戻った。
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