皎皎天中月
どれほど時間が経ったろうか。辺りはすっかり暗くなっている。恵孝は星明かりを頼りに岩壁を登り続けていた。もしどこか休めるようなところがあればと思ったが、そのような場所はなかった。だが岩の割れ目に稀に食べられる草や、草の実があった。滋養のあるものを選り抜いて口にした。そのせいか、不思議と疲れを感じなかった。
うさぎは相変わらず頭上にいる。恵孝の様子を時々見ている。
またしばらく経った。
さすがにもう、恵孝は自分が疲れない理由を食べたもののせいだとは思っていない。何も意思を持たないうさぎだとは思っていない。
岩壁に自分の影が映っている。東の空に月が昇ったのだ。だから確かに西に向かっている。不可解なことはあるが、西に向かっていることには変わりない。
うさぎは相変わらず頭上にいる。恵孝の様子を時々見ている。
またしばらく経った。
さすがにもう、恵孝は自分が疲れない理由を食べたもののせいだとは思っていない。何も意思を持たないうさぎだとは思っていない。
岩壁に自分の影が映っている。東の空に月が昇ったのだ。だから確かに西に向かっている。不可解なことはあるが、西に向かっていることには変わりない。