皎皎天中月
 整列、と号令があった。隊列を整える。芳空はさっと離れ、元の列に戻った。

 曰く。
「この先に道途絶え、岩壁あり。進むには岩壁を越えざるを得ず、しかし道がある保証なし。しからば、有志を集い、その者に先を託す」と。

 誰か、と上官は言う。
 このどこまで続くかわからない岩壁を登り、道がある保証のないところへ行け、と。
 明千はその岩壁を睨みつけた。また、誰かを犠牲にしようという上官の肚が解せぬ。誰が行くか。
 誰も手を上げるなよ、とも思った。この捜索隊はそもそもがとても不確かなものを求めるために編まれた。道のりもいい加減で、さらにその道もあってないようなもの。確実なことは一つで、蛇殺し草の毒により姫の命は二年で尽きるということだ。その二年のために、どれだけ不確かさを求めるのか。その不確かなもののために自分を犠牲にするのか。賢い判断をしろ。命を粗末にするな。
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