皎皎天中月
「これは、君は食べられるかい」
 といくつかの草や木を見せる。うさぎは短く返事をした。
 例えば犬が葱を食べると中毒症状を起こす。人間が口にして良いもので、うさぎが食べても平気で薬になるものを探す。

 木の皮を削り、草の実を潰し、それらを火にかける。幸い、すぐ近くに湧き水があり、その水をすくった。火にかけた器の中に水を注ぐ。じゅうっと水が沸く音がして、すぐに収まる。少し煮込む。
「変なにおいだな」
 うさぎが言うが、恵孝は構わない。器を火から下ろし、冷ます。

「鼻に効く。あと、体の中を温める」
「これを食べるのか」
 うさぎは嫌そうに臭いを嗅いだ。すぐに顔を背ける。
「うん。良薬は口に苦し、と言うだろう」
「良薬? これは良薬という食い物なのか」
< 82 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop