最後の着信メロディ
見れば、ミヨちゃんがハンカチを差し出している。

「あ、ありがとう」

受け取って、ハッとする。思わずそのまま返事をしてしまった。

「あ、アンタに言ったんじゃないからね!」

『はいはい』

「んでなんだって?アタシはアンタのことなんてとっくに吹っ切れてるんだけど?」

『まあ、そうだろうけどさ、礼と詫びくらいは言わせてくれ』

「……勝手にすれば?」

『じゃ、勝手にする。今日まで、ミヨのことありがとうな。あと、辛い役目頼んで悪かった。ごめん』

アタシは、歯を食いしばって耐える。

最後の最後まで、別の女のことばっかり言うような男のために、流してやる涙なんて持ち合わせてない…

そう思っても、アタシの瞳から流れるものを止めることは出来なかった。

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