最後の着信メロディ
「忘れてるかもしれなくて、一度しかいってない思い出の場所…?」

「確かにそう言ってたね」

スタジオ(のあった場所)の近くのファミレスで、私とユキさんは夕食をとっていました。

「思い当たらないですぅ…」

私はカレーのスプーンを口に咥えてプラプラとさせながらふくれてみせます。

「こら、行儀悪い」

ぺち、とおでこをつつかれ、私はスプーンを食器に戻してもう一度考えます。

しかし、どうしてもそんな場所に心当たりはありませんでした。

近所の場所は何度もいっているし、逆に一度しかいっていなくて覚えている場所なんて一緒に行った旅行先くらいしかありません。

でも、そんなところの中の一つだとすると、どこなのでしょう?

「でもさー、マキトは思い出の場所に行こうとしてたわけでしょ」

「はぁ」

「思い出ってすごした時間全部なわけじゃない」

「ですよねぇ」

「じゃあ、強弱の問題よね、印象の」

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