最後の着信メロディ
ユキさんが目を見開いてジュンペーさんを見つめます。ほとんど睨みつける勢いで。
「いや、ユキちゃんたちが辞めたあともさ、マキトだけはたまにきてたんだよ、他のバンドのライブの後を狙って」
「初耳だわ…いったい何しに?」
「んー、客はもういないんだけどさ、演らせてくれって。一人でギター持って」
私はあの日のことを思い出します。
熱気だけが残るフロア、薄いライトに照らされたステージ、そこにいたのは――
「残り香みたいのが好きなんだって、しかもタダだしってよく来てたよ」
「へぇー、ほんとにはじめて聞いた。なんかビックリだわ」
「まあ、片付け手伝うってことでチャラにしてたけどね。ある日を境に一切こなくなったけど」
「ある日って?」
ユキさんが尋ねるとジュンペーさんはあごに手をあてて考えるような仕草をしました。
「んー、3年前くらい?それまでは頻度の差はあったけど路上ライブみたいな感覚で使ってたね」
誰もいないライブハウスで一人、演奏しているマキト。
おそらく、彼ひとりのライブに観客はずっといなかったのでしょう。
あの日まで。
「いや、ユキちゃんたちが辞めたあともさ、マキトだけはたまにきてたんだよ、他のバンドのライブの後を狙って」
「初耳だわ…いったい何しに?」
「んー、客はもういないんだけどさ、演らせてくれって。一人でギター持って」
私はあの日のことを思い出します。
熱気だけが残るフロア、薄いライトに照らされたステージ、そこにいたのは――
「残り香みたいのが好きなんだって、しかもタダだしってよく来てたよ」
「へぇー、ほんとにはじめて聞いた。なんかビックリだわ」
「まあ、片付け手伝うってことでチャラにしてたけどね。ある日を境に一切こなくなったけど」
「ある日って?」
ユキさんが尋ねるとジュンペーさんはあごに手をあてて考えるような仕草をしました。
「んー、3年前くらい?それまでは頻度の差はあったけど路上ライブみたいな感覚で使ってたね」
誰もいないライブハウスで一人、演奏しているマキト。
おそらく、彼ひとりのライブに観客はずっといなかったのでしょう。
あの日まで。