最後の着信メロディ
ユキさんは、そもそもマキトの知り合いでした。

高校の先輩で、マキトのやっていたバンドのボーカルだったそうですが、

私がユキさんに会ったときにはすでに彼女は気のいい楽器屋の店員さんでした。

マキトはギターの調子が悪くなると必ずミストにやってきて、ユキさんに(タダ同然で)直してもらっていました。

それにくっついて来ては(タダでは悪いと)ぺこぺこと頭を下げる私を、ユキさんは妹のようにかわいがってくれました。

ユキさんは「アネゴ」を絵にかいたような人で、誰にでもぶっきらぼうなマキトが頭の上がらない数少ない人でした。

三年前のあの頃、部屋まで引き払って完全にマキトが消えたと確信した時に私が最初に訪ねたのもユキさんでした。

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