最後の着信メロディ
しかし、ソウタロウさんの告白を受けて真っ先に思い浮かんだのはマキトのことで

結局、あきらめたというよりは、心の隅に追いやって忘れようとしていただけだったのだと気づかされました。

まあ、当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。

そもそもが別れたわけでもなければ、理由を聞いたわけでもなく、本当に突然「消えてしまった」のですから。

忘れようとしていたのかどうかも、実のところ自分でもわからずにいました。

マキトがいないまま大学を出て、マキトがいないまま就職して、マキトがいないまま、今日になってしまっていただけかもしれません。

日々の生活の中で、空気の薄い世界の中で、私は窒息しないように強引に息継ぎをしていただけなのかもしれません。

思ったより女々しい女だったんだなあと思ってため息をついた時、バッグの中からこもった音が聞こえました。

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