ハリなしハリネズミ
ハリなしハリネズミ
 ハリネズミのウィッピー・ガムは、体中にハリがついているのに、ついていないのと同じでした。
「どうしてぼくのハリはかたくならないんだろう?」
 ガムはいつも不思議でした。
 他のハリネズミたちはみんなハリをピンッと伸ばして、ツンツンのハリにすることができます。
ガムはどんなにがんばっても、ハリがフニャフニャのまんまです。
「これじゃあガムはいつまでたっても、一人前になれないな」
 学校の先生は言いました。
 小さかったころはみんなハリをかたくすることができません。
 みんな練習をしてちょっとずつかたくなっていったのです。
 最初は皮をむいたバナナをさす練習。
 次に皮のついたバナナをさす練習。
 それができたらミカンをさして、最後にリンゴをさせるようになれば、もうりっぱなハリネズミの仲間入り。
 ガムは決して練習をサボっていたわけではありませんでした。それどころか、だれよりも一生けんめいにハリをかたくしようとしていました。
にもかかわらず友達のマフルクが皮のついたバナナを刺せるようになった時も、ガムは皮のついていないバナナで練習。
 ガキ大将のクレイバーがミカンを刺せるようになっても、ガムはまだ皮のついていないバナナで練習。
 クラスのアイドルのミルレインがリンゴを刺せるようになっても、ガムはまだまだ皮のついていないバナナで練習。
 いつになっても、ガムのハリがかたくなりはしませんでした。
 先生もあきれてしまって、しまいにはガムのハリはかたくすることができないのだとあきらめてしまいました。
 それからガムは落ちこぼれ。
 どこに行っても、みんなからいじめられました。
「♪ガムのハリは、ハリじゃない。
ボサボサ頭の毛と同じ。
やわらかバナナも刺せません。
くさったバナナは刺せるかも」
ガキ大将のクレイバーとその仲間たちがガムの前でからかいながら歌いました。
ガムはむきになってクレイバーに体当たりをしました。しかしクレイバーのハリはとてもとてもかたくて、ガムは逆にケガをしてしまいました。
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