ハリなしハリネズミ
 途中にリンゴの木があったので、チャックにリンゴをひとつ投げてもらい、それをガムは見事にさしつらぬきました。
「こいつは、すげぇぜ」
 バルバールはツバサをたたいて言いました。
「でも、これじゃあ食べられないね」
 穴ぼこだらけのリンゴを見て、チャックは言いました。
 ガムたちが山のすそまで降りて来ると、ギノーフは川の中で待っていました。
 ガムは二人に別れを告げ、カメのギノーフに乗って川を下りました。
 森の家に帰ってくると、お母さんがかけ寄って
「一体、どこに行ってたの?」
と、心配そうにたずねました。
「お母さん。ボク、一人前のハリネズミになったんだよ」
 ガムは笑顔で言いました。
お母さんは、おどろいて
「―まぁ。それじゃあ、ハリをかたくすることができるようになったの? そんなことができなくたって」
「ううん、違うよ」
 ガムは片目をつぶって、チッチッチッと立てた指を横にふり
「逃げることを知ったんだ」
 小さな胸をはって、言いました。


おしまい
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