ハリなしハリネズミ
 ガムはプイッとバルバールと反対を向き歩き出そうとしました。
「助けてあげないの?」
 チャックがそう聞くとガムはふり返ってバルバールを指差し
「あのサギはぼくがワニに食べられそうだったところを見捨てて飛んでいったんだ。これでおあいこなんだよ」
と、言いました。
「ちょっと待ってくれ。オレは助けようとしたじゃないか」
 バルバールはあわててガムに言い訳を始めました。
「見捨てる気なんてなかったよ。助けを求めに行こうとしたのさ。そしたら、ワナにはまっちまったのよ」
 必死でうったえるバルバールを見て
「本当に?」
 ガムは、うたぐり深くたずねました。
「本当さ」
 バルバールはガムの目をじっと見て言いました。
 ガムとチャックはバルバールの足に挟まる鉄のワナをお互いに反対側からひっぱって、ようやく外すことができました。
 バルバールは二人にお礼を言って飛び去ろうとしましたが、足のケガは思ったよりも深くて飛べなくなっていました。
「なぁに。足がキレイに治るまで、ゆっくり歩けばいいってことよ」
 バルバールは笑って言いました。
「鳥が飛べないなんて辛くないの?」
ガムがそう聞くとバルバールはまた大げさにツバサを広げ
「世の中には飛べない鳥なんてごまんといるんだぜ」
と、言いました。
「羽があっても、ニワトリもペンギンもダチョウだって飛べないんだ。だけど、あいつらはそれを辛いなんて思っちゃいないのよ」
 ガムとチャックは顔を見合わせて、声をそろえてたずねました。
「どうして?」
 すると、バルバールはツバサをピンッと上に指差して
「必要ないからさ」
と、得意げに言いました。
 ガムはお母さんの言葉を思い出し、チャックはむずかしい顔をしました。
「―でも、羽があったら飛びたいはずだよ」
 ガムがバルバールに問いつめると
「飛べたところでいいことないってあいつらは知っているのよ。歩く以上に疲れることもね」
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