ジェンガたちの誤算

先輩が教室から出てくると、次々に後輩たちが近寄り先輩を囲んだ。
私はその輪の外側から少し潤んだ先輩の目を見つめていた。

子供のようにもじもじとその場に佇む私を見つけた先輩は、
手を挙げて微笑み、輪を抜けて私のほうにやってきてくれた。

「桃子ちゃん!ありがとう」

そう言うと先輩は、小さな名刺ほどのカードを私に差し出して、

「4月からは役員だね、後輩もできるし、少し煩わしいこともあるけど、
 絶対にいい経験になるから、勉強との両立頑張ってね」と言った。

私は嬉くなると同時に、恥ずかしくてたまらなくなり、
そのカードを受けとる時にとっさに自分の手紙をポケットにしまった。

「ありがとうございます!」

そう言って深く深く礼をした。

13歳の私には、18歳の容姿端麗な対馬先輩が、まぶしくて仕方なかった。
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