ジェンガたちの誤算
その言葉を聞いた彩紗は小さく「げ」と言って顔を歪め、
指定鞄の中からベストを取り出すとそれを着ようとしていた。
私はPHSをスカートのポケットにしまい、
彩紗のほうへ行って鞄を受け取るしぐさをして着替えを手伝った。
「おじさんはドキドキですよ」
私がそう言うと「サンキュ」と言って彼女はベストを被ると、
乱れたショートカットの前髪をきちんと整えなおし、私から鞄を受け取った。
「あーねぇねぇ明日テストが終わった後ひまぁ?」
ペットボトルを左手で振り回し、右手で携帯をいじりながら茉莉恵が言った。
私も彩紗も返事をしないうちに彼女は続けて、
「合コンしない?」と言い、いたずらな笑い方をした。