ジェンガたちの誤算

その言葉を聞いた彩紗は小さく「げ」と言って顔を歪め、
指定鞄の中からベストを取り出すとそれを着ようとしていた。

私はPHSをスカートのポケットにしまい、
彩紗のほうへ行って鞄を受け取るしぐさをして着替えを手伝った。

「おじさんはドキドキですよ」

私がそう言うと「サンキュ」と言って彼女はベストを被ると、
乱れたショートカットの前髪をきちんと整えなおし、私から鞄を受け取った。

「あーねぇねぇ明日テストが終わった後ひまぁ?」

ペットボトルを左手で振り回し、右手で携帯をいじりながら茉莉恵が言った。

私も彩紗も返事をしないうちに彼女は続けて、

「合コンしない?」と言い、いたずらな笑い方をした。
< 113 / 127 >

この作品をシェア

pagetop