ジェンガたちの誤算

茉莉恵の素行と初恋


「シンさんとやったらしいよ」

彼女はバーバリーのベージュのマフラーに、
その小さな顔の半分をうずめながら言った。

「は?!」

私の声は乾いた空気を勢いよく振動させ、
ソフトテニス部の掛け声に負けず劣らずに響いた。

彩紗の顔を見ると、彼女は下向き加減に、表情は変えずに続けた。

「茉莉恵の母親が留守のときに、そうなったらしい」

「え、え、全然意味が分からないんだけど、だって私らまだ中1だよ?」

グラウンドを通り過ぎて西門から校内を出ると、
そこからは駅までの長い長いゆるい下り坂が続いている。

私たちはその坂道を下り始めた。

「そうそう、まだ13歳ですよ、ウチなんて、生理も来てやしない」


驚いた。

二人の「女」としての一大イベントの訪れに対する興味としてではなく、
茉莉恵のロストバージンの早さと、彩紗の二次性徴の遅延とのその差に。
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