ジェンガたちの誤算
ローファーに履き替えてグラウンドを見ると彩紗の姿をすぐに見つけることができた。
細すぎる彼女を見つけるのは容易くて、その姿を見つめながら、
今日がただの金曜日ではなくバレンタインだということを思い出した。
私は箱をゆすってみると、かさかさと何かの中に納められた固体が揺れ、
その感覚と音から乾燥した何かだということだけが分かった。
ひとりで開ける勇気が出ない私は、彩紗の練習が終わるまでその箱を持ったまま、
薄暗くなってきている冬空の下で走る彼女を見ながら、ソフトテニス部の掛け声を聞いていた。