ジェンガたちの誤算
やっと【たち】が彼なのを理解して自分の緊張がほどけていくのを感じた。

「俺、ナンパだと思われたみたい」

彼は自販機からタバコを取り出しながら私を見上げて言った。

その笑顔がやさしくて、慶ちゃんのことを思い出した。

「ごめんごめん、この人、陽ちゃん、辻井陽太、私の塾の先生なの」

言葉を失っている私に茉莉恵がそう言ったので、
慌てて私は「あ、はじめまして、桃子です」と言った。

「元、だけどね。先生は。よろしく」

彼の言葉に微笑んで軽く頭をさげた。

するとプリクラの中からあと二人、彩紗と制服姿の男の子が、
プリントされたてのそれを持って出てきた。

「ももちゃーん」

そう言った彩紗に私は「おー」とだけ答えた。

普段先生と父親以外の男性と話す機会のない私は、
この時きっと、すごくおろおろしていたんだろうと思う。
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