ジェンガたちの誤算
ハサミでプリクラを切ってから、エアーホッケーをした。
辻井陽太はタバコを吸いながら審判をつとめていた。

ホッケーが終わる頃には私の緊張もすっかり取れ、
彼になんで【元先生】なのか尋ねた。

彼は茉莉恵が通っている塾でこの春まで数学を教えていた。

今年大学を卒業する彼は、4月から化粧品メーカーに就職するため、
期末試験対策の授業を終えてそのバイトをやめたのだった。

男の人が化粧品メーカーということに驚いた私と彩紗に、

「いや、本社勤務だから美容部員になるわけじゃないんだ」

と笑って教えてくれた。

茉莉恵は【世間知らずね】といった様子で、
私と彩紗を見てふふっと笑っていた。

制服を着ていた男の子は、立花 友哉
と言って茉莉恵の幼馴染で、塾も同じだと言う。

友哉と彩紗は私の知らないバンドの話ですっかり盛り上がり、
ゲーセンを出てファミレスに向かう頃には、二人でエアギターをして騒いでいた。
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