da capo
レイは、捨てられたノラ猫みたいだった彼を放っておけなかったの。

お風呂も貸してあげて、食事も出してあげたの。

それなのに、

「……ありがと」

彼はボソッとそう言っただけだった。

本当に無口な男だったのよ、奴は。

最後まであんなとこにうずくまってた理由は分からなかったわ。





彼ね、前髪がとっても鬱陶しくてね。

次の日レイは髪を切ってあげたの。

そしてびっくり。

それがあんた、すごい美形なのよ。

通った鼻筋に、ちょっとだけ哀愁漂う綺麗な目……。

――そうそう、流し目が上手だった。

レイはきっとあの流し目にやられたのね。

まぁ、それに気付くのはもっと後のお話。
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