ワンサイド フィルム
「でも、ウチのサークルの双璧に恋人できたら、出席率減少しそーですよね。」
「双璧?」
「美咲センパイと来夏センパイに決まってるでしょ!」
「モテんのに、なぜか来夏もずっと1人だよね、」
すると、部室のドアが開いて、背後に香る、カルバンクラインの香り。
「え、俺の話?」
ブリーチで抜かれた無造作に伸ばされた明るい髪。
キレイなラインのTシャツをさらりと着こなす。
私を不幸のどん底に突き落としてなお、優しい男。
「…、ライカ、」
井沢 来夏。
カメラと同じ「ライカ」
とてもじゃないけれど、完璧な男じゃない。
けれど、ヒトをひきつける、何かがあった。
未完成さ、さえ、彼に乗せれば魅力に見えた。
「なんだか、揃うと、美咲センパイと来夏センパイって似てますよね。」
その言葉に、来夏は笑った。
来夏は私の後ろにいたけど、何となくわかった。
「ん?そう??俺は美咲ほどアタマよくないヨ。」
「いや、でもまとってるオーラが似てるっていうか、」
「オーラ???」
私たちは『似ている』
ただ、違うのは、
私には来夏が必要で、
来夏には、私が不必要だ、ってこと。
「映画行くなら、俺もさそってよ、立川ちん。」
「お前と約束すると遅刻すんじゃん。」
「ひどっ!」
来夏には、誰も必要じゃない。
『美咲がどうとかじゃなくて、俺、付き合うとか、したくないんだ。』
こんなにヒトをひきつけるのに、来夏は1人でいたがる。
それって、
さみしくはないんだろうか?
「でもまあ、俺と美咲、似てるのかも。」
「え?」
「俺、美咲といるとラクだよ。」
ふわっと少年のように笑う。
こんなにヒトをひきつけるのに。
どうして、来夏はひとりでいるの?