アリと王女
アリ、再び
『ご馳走様でした』
わたしはナプキンで口を拭いた。
白い布にケチャップがつく。
その時、マーゼ伯母様がねぇと嬉しそうに声をかけた。
『お味はどうだった?実はこれ、全部わたしが作ったのよ』
『とっても美味しかったです。マーゼ伯母様ってお料理も上手なんですね』
わたしは意味ありげにママの方を見た。
ママはデザートのプリンを頬張っているところだ。
ママも少しはマーゼ伯母様を見習ったらどうかしら…
『…さん』
ーえっ?
今、一瞬声がしたような…
『お…嬢…さん』
『しっ!』
わたしはペチャクチャとお喋りするママ達を睨んだ。
とたんに、しんーと静まり返る。
この声、どこかで聞いたことあるのよね…
『お母様。わたし、星が見たいので夜の散歩でもしてきます』