アリと王女
『わたしは動物が嫌いなの。だから、アリが好きだなんて論外よ。見てるだけでゾッとするわ』
ジワッと鳥肌がたつ。
少し言い過ぎたかしらー
でもその心配は無用だった。
“ヒナリ”は鼻でフッ…と笑い、こう言った。
『それは、わたしを油断させる嘘ですね。なんと卑怯な…!』
あらら…
このかた、勘違いしちゃってるよ
面倒くさいなぁ
わたしはクルッと向きをかえ、“ヒナリ”を指で軽く弾いた。
“ヒナリ”は痛っと言ったが、そんなのお構いなしにわたしはもときた道へ歩く。
『あっ待ってよ!今のはごめんなさい。冗談だったの』
“ヒナリ”は慌てて近づく。
『実は、アリの王様がいなくなっちゃったの。多分、北の茨の城の魔女がさらっていったんだと思うわー』
茨の城の魔女…
『西の城の王女ーエルダさんが動物嫌いなのは承知してる。だけど、あなたが必要なの!
お願い。わたし達を助けて!』
“ヒナリ”は真っ直ぐわたしを見つめる。
どうやら本当に大変らしいー
…でも、どうしてわたしなの?