絵画
全部あわせれば億とする絵が、忙しい授業の行き来の間に目に入る。

ゆっくり眺めたいと常々思っていたが、いつも絵の傍を通るときは忙しいのだ。

もったいない話だが、生徒も授業の移動であたふた通り過ぎていく。

新入生がものめずらしそうにたまに見入っていることはあっても、絵に目を留めて鑑賞しているものなどほとんど見たことがない。

その学校にいた何年間かの内で、私もわざわざ空き時間に絵を眺めにいったのは数えるほどだ。

今になってみると、もっとゆっくり見ておきたかった気がしてならない。

絵の中には世界がある。

モンマルトルやマルセイユやタヒチの風景でなくても、現実とはちょっとだけ違う世界がある。

画家の目を通して描かれたその世界は決して現実ではない。

現実ではないから、絵の世界にはロマンがある。

絵本や小説の中の世界同様、そこには作者が欲する何かが描きとられている気がする。

それが、見るものにロマンを感じさせる。

リアルな写真とは一味違う絵の世界。

私は絵の世界に見入るとき、そんな気がして癒される思いがする。

中学時代の私はそれに気が付かなかったが、絵をじっと見ていると今の私には語りかけてくるものを感受することが出来るように思える。

久しぶりにパステルか絵筆を握ってみたくなった。
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