手をつないで
「机の上に、明日提出の数学問題出てたから…『お前、森永と家近いだろ』って先生に言われて、持って来た。」
上原は特に嫌そうな顔もせずに、鞄から私の数学の宿題プリントを取り出して渡してくれた
「あっ…ありがと」
「別に。じゃあな。」
「うっ…うん!バイバイっ…」
小さな声で挨拶をすると
上原は早々と自転車にのり、去って行ってしまった
―……男子なら、普通こういう時、嫌そうな顔をしたり、先生からのお願いを断ったりするんじゃないか…?
そんな考えが、私の心を動かす
「やっばいなー…私、惚れやすすぎ……」
そう小さな声で言いながら、玄関のドアをあけ、家の中に入った。
(存在感無いなんて言ってごめんなさい…)
心の中でそう言いながら、私はギュッ…と数学のプリントを握り締めた