37℃ 【短編】
「今日は天気がよくて気持ちがいいね~。」
背伸びをして、微笑む。


のんびりやのリリは、いつでも空を見ていた。



「リリは、何でいつも空を見ているの?」


「だって、空はいつも変わらずにそこにあるじゃない。」



「そうだけどさ…」


答えになってないよ、と僕が言おうとするとリリが哀しそうに、そして優しく微笑んだ。


「こんなデッカイ空を見ると自分ってちっぽけだと思うよね。
でも、こんなちっぽけな私でも、きっと世界に必要だから生まれてきたんだよ。
それに、ゆっくり流れる雲を見ると、焦んなくてゆっくりでいいんだな、って思えるんだ。」


空を見上げた僕に、リリは無邪気に微笑んだ。



「…本当だ。気持ちが落ち着くね。」


「でしょ?」


「ってリリ落ち着いている場合じゃないよ!!そろそろ旅立ちの準備をしなきゃ置いてかれるよ!!」





「うん…。…私此処から離れたくないな…。」

そう言ってしょんぼりうつむく。




「でも、新しい場所にはもっと楽しいことが待っているんだよ。
だから、このまま此処にいることは出来ないんだ…。
それにリリなら新しい場所でも上手くやっていけるよ。」



「でも…でも…そしたらもうテンちゃんには会えなくなっちゃうんでしょ?」



「…大丈夫、だって僕らは広い空の下繋がっているんだろ?」


リリは曖昧に笑って、空を見上げた。
その時、リリが何を考えていたのか、僕には分からない。



でも、引き止めてしまったら、リリは此処で朽ち果てるのをただ待つだけなんだ。

そもそも、引き止めることなんてできないのを、僕もリリも本当は分かっていた。
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