37℃ 【短編】
春の強い風が吹くと僕達は離ればなれ。
誰もそれを止めることなんて出来ないんだ。


遠い世界へ、音もなく旅立つ。


旅立ってしまったリリがどこにいるかなんて、知る術もない。




今年も強い風が吹き始めた。


「リリ…もうお別れの時間だね…。」

明るく見送ろうと思ったけれど、リリの泣きそうな瞳を見ると言葉に詰まってしまう。


「…リリのこと忘れないでね?
また、いつか会おうね?」


リリは涙を溜めたまま、むりやり笑顔を作って空に飛び立って行った。


忘れるわけなんて出来ないんだ。


「またいつか会える」
そんなの不可能に近いことぐらい僕らは知っていた。

でも、信じたかったんだ。
きっといつか会えるんだって。

そう信じなければ、この悲しみから抜け出す光を見つけ出すことができないだろう。



毎年この時期は胸が締め付けられる。


僕には何も出来ない。
元気で、また青空を見上げていて欲しいと願うだけ。


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