37℃ 【短編】
一人取り残された僕は、何も出来ずただ立ち尽くすだけ。


リリは、風に乗ってふわりふわりと飛んで行く。



僕も同じように、飛び立ちたい。
どんなに苦しくて、離れたくなくても僕は一緒に行くことは出来ない。
僕にはそれを許されていないんだ。




リリは、たんぽぽ。

僕は咲く場所を間違えた花。



一生飛ぶ事も出来ず、ただこの場に根を貼って、旅立ちを見守るだけの存在。




大空の向こうの世界に、どれだけ憧れたって、知る事など出来ない。




だから、僕はリリに思いを託す。

どうかたくさんの世界を知って。

たくさんの事を見てきて。





何より願うのは、たくさんの笑顔、幸せに溢れ、空を見上げて欲しい。
リリが願ったものがその世界にあって欲しい。



哀しい顔じゃなく、笑顔のリリを想った。

だから、もし僕の事を思い出すときがあれば、笑顔を思い出して欲しい。



そう願って、僕はリリの大好きな空をずっと見ていた。




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