「私」にはなかった「モノ」【実話】

出会い。

面接は簡単なものだった。

順番がきたら仕切りの中に入って少し質問に答えるだけ。
なんだか割り込みされたが、文句を言うのも馬鹿馬鹿しい。

私の番だ。

これはきっと落ちる方が難しいんだろうな、と思った。
詳しく込み入った質問がなく、本当に必要な事だけ。
まぁ年末年始の短期アルバイトなんてこんなものか。

予想通り合格した。


私は区分けの仕事に入った。

住所別に年賀状を分けるだけの仕事。
簡単だ。
単調な作業で数時間。

暇だ。

私が入った班の職員さんは不思議な人が多かった。
ずっと文句を言っている人、不貞腐れてずっと仏頂面をした人。

一番気になったのは若い気さくな男の人。
下手をしたら私とそんなに変わらないくらい若い。
18か19くらいだと思った。
細身で、色黒。
彫が深いな、と思った。
私の感性からしたら、彼の容姿は整っていると思う。
何より気になったのは、その細い腰だったのだけど、これは私の趣味の問題だ。

彼と私は同じ地区の担当だった。

若い職員さんは彼だけで、他はおじさんばかりだった。

他の地区になった女の子達の恨めしい視線が痛い。



けれど、少し得した気分になった。
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