「私」にはなかった「モノ」【実話】
1月6日。
今日は職員さん達も来ていた。

アキラさんもいた。

何故だか今日はいつもより口数が少ない。
きっと昨日は体調を崩していたんだと思った。
まだ体調が悪くて口数が少ないのだろう。
そっとしておいてあげるのが良い。

私からも特に話しかける事はなかった。



「昨日でバイト終わりじゃなかったの?」



突然聞かれた。

一瞬自分に言っているのではないと思ったが、内容からして自分だと気づいて振り返った。
アキラさんがこっちを見ていた。



「休憩時間だよ。」

「あ、すみません。ぼーっとしてて…」

「昨日でバイト終わりじゃなかったの?」

「昨日班長さんがこれる人は来て欲しいって言っていたんです。」

「へぇ。でも来てる子少ないね?」

「ほら、高校生の人が多い訳ですし、バイトは昨日で終わりの予定で用事入れちゃったのでしょう。私も入れようかと思ってたのですけど、当日に決める性格なんで。」

「ふぅん、それで?別に来なくてもよかったんじゃないの?」

「いえ、そうなんですけど…昨日職員さん達休みだったじゃないですか?だからお世話になったお礼が言えなかったんで、今日は仕事と言うかお礼を言いに…どうせ暇ですし。」



アキラさんは良い人だ。
体調悪そうなのに話しかけてくれる。
明るすぎる人は苦手だけど、この人は別に苦にならなかった。
でもなんとなく、アキラさんも会話の得意な方ではなさそうだと思った。

なんとなくぎこちないからだ。



「まめだね?」

「そうですか?でもお礼言うにもおばさん達はお休みみたいだし…アキラさんくらいですね、お礼言う人。」



笑いかけたら、下を見ていた彼がこちらを向いた。
何か言おうとしたのか、ただこちらを見ただけなのかはわからなかったけれど、ちょう
ど休憩時間が終わり、また仕事に戻った。


今日も仕事の終わる時間。



「お疲れ様でした。」
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