「私」にはなかった「モノ」【実話】
きっと、このメールがなかったら私は誤った道を辿っていたのだと思う。

意味もなく…

道を誤った後は、自分の思ったとおりにはならず、家族にただ迷惑をかけただけだろう。
きっと…



こんばんは!アキラです!仕事終わってどう?楽しかった?



なんとなく、嬉しかった。

アドレスは教えたが、普通はメールなんかしないだろう。
ただの挨拶のようなものだ。
会社員が名詞を渡すのと同じ。
彼もそう捉えていたと思う。

けれども、もしメールがきたら…
もしメールがきたら、きっと何かが変わると思っていた。
退屈で退屈で、考えることはみんな私を追い詰める毎日を、何故だかこの人なら変えてくれるのではないかと思った。
現に、メールがきてみてこんなに楽しくなった。

今の私にはこれだけで十分だった。



今晩和。
アユミです。
お元気でしたか?
その節は大変お世話になりました。
とても楽しかったです。

元気だよ!
そう、よかった!
サイト見たよ!絵、上手いじゃん!

そんな事ないですよ~
頑張ってはいますけど…



挨拶みたいなメールをしていた。
けれども、不意に彼が私に送ってきたメールが、また私の筋書きを変えた。



ねぇ、今度どっかで遊ばない?
こないだ話してたゲームの話、また聞きたいな。

いいですよ?
アキラさんの都合がよければ。
私も何かお礼がしたいですし…

やった!じゃあ休みがわかったらまたメールするね!
おやすみ!

はい、お休みなさい。



どんどん予定から外れていく。
予定から外れている筈なのに、どうしてこんなに嬉しいのだろう?
昔から予定が狂うのは大嫌いだったのに…




何故こんなに嬉しいのだろう?
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