「私」にはなかった「モノ」【実話】
目が覚めた。

目覚めが悪い。
夢の内容を全部覚えていた。
覚えていなくてよかったのに…

ふと横をみると、携帯の着信があったらしい。
青だから…メールだ。
電気をつけて時計をみた。

午後10時。

サイト関係のメールだろうと思った。
だが違った。
アキラさんだ。



遅くにごめんね?
今何してる?



ほんの5分かそこら前にメールの着信があったらしい。
多分この音で目を覚ましたのだろう。
返信を打ち始めた。



いいえ、大丈夫ですよ~
ちょっと寝てました。

え!?寝てた!?
起こしたかな?
ごめんね?

いえ、大丈夫ですよ~
お昼寝のノリで寝てただけなんで。
どうせ11時には起きなきゃいけなかったんです。
気にしないで下さい。



11時からサイトの更新をする予定だった。
11時にアラームをかけてある。



本当?
ごめんね?特に用事があった訳じゃないんだけど、何してるのかなって思って…

いえいえ~メール頂けて嬉しいです。
あ、ちょっとお聞きしたい事があるんですが…
宜しいですか?



以前オンラインの友達とメールした時に、バレンタインも近いのでチョコを作ってくれと頼まれた。
別に料理が得意な訳ではない。
どちらかと言えば不慣れな方。
でも理由があまりに可哀想だったので断れなかった。



「今まで女の子にチョコ貰った事ないんだ。」



私でよければ…下手糞ですけど…

女の子とまともに話をした事もないと言っていた。
手渡しは出来ないけれど、作って発送すると約束した。

作る事は問題ない。

大丈夫だ。

ただ…男の人と女の人では味覚が違うとかよく聞く。
どんな味が良いのだろう?
と考えていたところだった。

家でオヤツ程度に作ってちょっと御裾分けした事はあるが、男の人にあげるつもりで何かを作った事はない。
きっと彼は多少期待しているのだろうから…何か悪くて聞けない。

アキラさんなら答えてくれるかも…と思った。
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