「私」にはなかった「モノ」【実話】
近場で他に遊ぶところもなく、とりあえず近くの公園に来た。

住宅地の中の小さな公園。
ここは私の家の目の前だ。

その公園の石造りの机と椅子のあるところに座った。
藤の木が伸びて私達の座る場所の屋根になっていた。
時期だったら綺麗な藤の花が見れたかもしれない。

話題を振ったのはアキラさんだった。



「明日誰かと出かけるの?やっぱ彼氏?」

「やだなぁ~彼氏なんていませんよ~家で寝ます。明日はきっと母も姉も家にいるので。」

「そうなの?信じらんないなぁ。絶対いるでしょ?」

「いませんよ。私、男の人苦手なんです。」

「え!?」

「あ、アキラさんは大丈夫ですよ?じゃなくて同じ歳くらいとか…それに話す機会もないですから。」

「ふぅん…もてそうだけどなぁ~」

「またまた、私そういうお世辞嫌いですよ~」

「お世辞じゃないよ。可愛いと思うし。」

「あはは、有難う御座います。でも、もてませんし、彼氏もいません。それにうちそれどころじゃないんで…」



はっと口を塞いだ。

塞いだと言うよりは抑えただけだが、あまり家の事は話したくない。
父が入院している話はした。
けれどもそこまで酷いだとかそんな話はしてなかった。
他人にあまり家庭の事を話したくなかった。
父の入院を知っているのも、家族以外ではそんなにいない。

何故アキラさんに話してしまったのかわからなかった。



「あ、お父さん入院してるんだっけ?そんなに酷いの?」

「いえ…まぁ…あ!そういえば…忘れてました。」

「え、何々?」
< 41 / 51 >

この作品をシェア

pagetop