「私」にはなかった「モノ」【実話】
ぱっと笑顔を作って鞄の中をあさった。
昨日作ったチョコレートをアキラさんに差し出した。



「ご迷惑でしたら捨ててしまって構いませんが、チョコレート作ってきたんです。バイトでお世話になった…お礼にもなりませんが…」

「え!?ほんと!?有難う!え~これ作ったの!?」

「はい。あんまり美味しくはないと思いますけど…宜しければ食べてやって下さい。」

「うわ~、有難う!こんな若い子に貰ったの始めてかも。」



喜んでいるようには見えるけど…
実際、嬉しくはないだろうなぁ…と思った。

こんな子供に貰ってもなんにもならないし、手作りという時点で味は腹を括らなければならない。
捨ててもいいとは言ったけど、あちらとしてはそうもいかないだろうし…
迷惑な物を渡してしまった。
そんな事を考えて少し凹んだ。

またやってしまった…



「どうしたの?」

「あ、いえ。無理して食べないで下さいね?美味しくないと思うんで…」

「いやいや!有難う!帰ってゆっくり食べよう!」



今日は暗くなってきたのでもう帰ろう、となった。




なんだか意外と普通に遊べた気がした。
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