あたしの執事
食堂に着くと、美味しそうな匂いが漂ってきた。




愛梨はテーブルの横に立つとすぐに、椅子が後ろにひかれた。



ここ最近は、自分で椅子を引いていたため、愛梨はその違和感に驚き、椅子をひいた人物を見上げた。



「坂上…。」





眼鏡越しに揺れる長いまつげ


鼻筋の通った端正な顔立ち


意志の強そうな引き締まった口元


黒曜石のように輝く瞳


かっこいい…。




愛梨は思わず、見とれてしまった。




「どうなさいましたか?」


坂上は、わずかに微笑を浮かべながら言った。


「別に。」




まさか坂上のかっこよさに一瞬心が奪われた、だなんて口が裂けても言えない。



相手は、今から追い出す執事なのよ?


愛梨、しっかりしなさい。



そう自分に心の中で言い聞かせた。













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