わたあめ雲の下で…
プロローグ
“綺麗だ”と思った。
男の顔を見て“綺麗”だなんて、本人にしてみれば嫌味に聞こえるかもしれないけれど。
それでもそう思ってしまうくらい、彼の放つオーラは他の男子と違っていた。
開け放たれた窓に肘をついて遠くを見る瞳。
無意識にどきりと胸が高鳴ってしまう。
思えば、自覚なんてなかった。
最近彼が視界の端にちらつくようになっていて。
まさか私が彼を追いかけていたなんて…。
「…また見てる」
「え?」
「ほら、ゆーくんの事」
私の顔を覗き込んだのは、親友のリク。
彼女は、すっと彼を指差す。
つられてもう一度彼を見ると、爽やかな風に柔らかい髪の毛がさらさらと揺れていた。